冷酷な王さまは愛し方を知らない
level 4

現実と憎悪



本格的に寒い季節が訪れ、時折ちらほらと雪が舞う。
この辺りは積もるほどではないが、寒くなるとこうして雪が降ることもあった。



「でも、今年は…積もりそう」



店じまいのため花を片付けようと店先に出て空を見上げる。
大きな粒の雪がハラハラと城下を白く染めようとしていた。



「本格的に積もる前に帰っちゃいなさい。片づけは私がやっておくから」

「はい…。あと少しだけやったら帰ります」



サーシャさんは、この花屋が花屋兼自宅になっている。
ゼスおじさん、サーシャさんのお父さんは近くに住んでいるのだけど、ここで生活した方が何かと便利だからと一人暮らしをしているのだ。



「いいから帰んなさい。お母さんの側にいてあげた方がいいでしょう」

「…はい。ありがとうございます」



サーシャさんの優しさに甘えることにして帰り支度を始めた。
お母さんの体調は、最近思わしくない。
この寒さのせいもあるのか、床に臥せったまま。
心配ではあるのだ。



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