冷酷な王さまは愛し方を知らない

その感情の呼び方




『名前はない。必要ならつけたらいい』



温かな気候に、心も穏やかになる。
晴れた空を仰ぎながら、雨がしのげる天井だけの風通しの良い騎士の練習場を見ていた。


今日からクリスさんが訓練に復帰するのだという。
もう少し休んでもいいと周りは言ったそうだけど、本人がすぐにでも復帰したいと聞かないのだという。

身体がなまるのが耐えられないんだって。



「やあ、リズ。珍しいな、訓練を見に来たのか?」

「あ、クリスさん…。ええ。今日からクリスさんが復帰だと聞いて」

「そうか。心配してきてくれたんだな。ありがとう」



すっかり訓練の準備を整えた様子のクリスさんが姿を現す。
逞しい身体。
その身体にはあちこち古傷が伺える。



「そうだ。リズにはちゃんと報告しておきたいことがあるんだ」

「報告…?」

「ああ、サーシャの事…。正式に、結婚を前提に付き合いを始めることになった」

「…え!?本当ですか!?」



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