うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
『正しい秘書のススメ』
ワックスで磨かれた廊下を、歩きやすい五センチヒールのパンプスでコツコツと規則正しい音を響かせながら進んでいく。

「二週間後の会食の予約と、そろそろお中元の手配もしないと」

分厚い手帳でスケジュールを確認しながらオフィスへと急ぐ私、井上日葵(いのうえ ひまり)二十八歳。

身長百六十センチのやせ型。清潔感があり、尚且つ華やかな印象を持たれるメイクを施し、背中まである黒髪はしっかりまとめ、毎日の業務に当たっている。

奨学金を利用して高校、大学を首席で卒業し、家庭用電化製品の開発・製作・販売を行なっている【Bright】に入社。

大阪と北海道に支社があり、総従業員数約五千人。近年急成長を遂げている家電メーカーだ。

私の勤め先は、都内のオフィス街にある十階建てのビルの本社。秘書課に配属され、半年前から社長の第一秘書として働いている。

社長の桜泰三(さくら たいぞう)は五十八歳になる。

ダンデイで社交的。年齢より若く見え、厳しく、時には優しく部下に接しており隠れ社長ファンが多い。
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