座り心地抜群のロッキング機能付きのチェアーに腰掛け、神妙な面持ちで机の上で祈りを捧げるように手を組んでいる社長の姿に、『またか……』と深いため息が漏れた。

「社長、ご用件は?」

ツカツカと近づき声を掛けると、予想通りの答えが返ってきた。

「井上くん、廉二郎(れんじろう)のことなんだが……」

社長が言う廉二郎とは、彼のご子息で我が社の副社長の職に就かれているお方だ。

今年三十歳になる彼は、学生時代ずっとバスケットボールをしていたらしく、身長百八十五センチの長身に程よい筋肉がついていて、非常に男らしい体格。

綺麗な黒髪から覗く切れ長の瞳にスッと伸びた高い鼻。整った顔立ちをしており、影から独身女性社員から熱い眼差しを受けている。

なぜ影からかというと、彼は仕事はデキるものの、一切感情を表に出さず冷静で笑顔を見せない。

怒っているようにも見え、社長とは違い社員は気軽に近づけない相手なのだ。

彼についている秘書もよく、『気難しい人でいつもビクビクしちゃう』とか、『ふたりっきりになると生きた心地がしない』とか、『ミスしたら……って想像すると怖くて、いつも気が抜けない』などと愚痴を漏らしている。