【医、命、遺、維、居】場所
家族という存在
私、傅雖柚希(カシイ ユズキ)が働く
生羯(イチョウ)メディカルセンター。



国境なき医師団みたいなことをしていたから、人材不足も相まって小児科医兼産婦人科医を仰せつかっている。




通路を歩きながら垣間見える様子を書類片手に楽しむ。





とある妊婦と看護師は、採血の真っ最中のようで。




「このあいだテレビで動物特集していた時に、『動物は可愛いわよね~。文句は言わないし、癒されるわ~。』なんて言ったら、あの子なんて言ったと思う?」



「なんて言ったんです?」



「『悪かったね可愛くなくて。』だって。あの時の顔ったら!貴女に見せたかったわ~!」



「まぁ、言うこと聞かない時もありますしね。」




「そーなのよ!憎たらしくて、可愛くない時もあるちゃあるじゃない。でも、そんなのどうでもいい事でしょ。動物相手に嫉妬してて、それこそプクッって膨れたその顔の方が可愛かったわ~。」



「見たかったです。反抗期真っ最中だって言ってましたものね。怒っても子供は特別っていつか分かってくれますよ。」





とある中学生ぐらいの女の子と高校生ぐらいの男の子は、待合ロビーで子供らしからぬ会話を繰り広げていて。




「お母さんがね、私のこといたらない子で~って近所の人に言うの。嫌だったから後でお母さんになんで?って聞いたら、『自分が自分の子供を悪く言うのはいいのよ。ただし、それを他人に言われるとイラッとするのよね~。』って言っててさ。歪んだ愛情じゃない?なんで普通に愛せないのかな?お兄ちゃんだって褒められたいでしょ?」



「諦めろ。親とはそういうものだ。大体日本の文化は自分を下げるからな。」






とある赤子を連れた女性と助産師は、健診を終えたところのよう。





「言葉が通じないって大変でしょ。」



「はい・・・。でも、少しずつ伝えてきてくれることが分かってきました。主人も『ママには分かるんだな』って言ってくれて。」



「そっか、そっか。悪戦苦闘しながらだけど頑張ってるね!新米ママ、えらいよ!」




「ありがとうございます・・・!ママって呼んでくれる日が楽しみです。」





あたたかくも重く尊い場所。




・・・なんだけど。
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