冷徹王子と成り代わり花嫁契約
八章 明かされた事実

『ねえ、この儀式が終わって私の記憶がなくなったら、私はどうなるの?』


国王陛下と、女王陛下、それから何人もの兵士や従者が見守る中で、小さな少女は不安そうに呟いた。

少女の小さな手を取っていた初老の女性は優しい表情のまま、口を開く。


『イリヤ様は厳、正な審議の結果選ばれた庶民の夫婦の元で、年頃になるまで庶民として育てられることになっています』

『そう。ロゼッタは?』


自分で聞いたくせに、幼い頃の私はそのことには特に興味を持たずに、次の質問を口にした。


『本来の婚約者であるイリヤ様に何かあっては困りますので……ロゼッタ様は、イリヤ様として……エリオット王子様のご婚約者として、生きて行かれます』


女性は子供をあやすような優しい声音でそう言いながら、幼い私の手の甲をなぞるようにゆっくりと撫でた。


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