「今日はちょっと暑いので、さっぱりしたものでもいいですよね。あ、社長の好きな食べ物ってなんですか?」

 なぜか操作盤に向かって話す彼女の背中を、俺は壁に寄りかかって眺める。

 やっぱりポニーテール最強だなぁ。真っ白な首筋にキスをして、舌でなぞったら、彼女はどんな声を聞かせてくれるだろう。


「……あの、私は好き嫌いがほとんどないのが自慢なんです。それから、ポテトサラダは結衣さんから今度教えてもらおうかなぁって思っているので、上手く作れるようになったらお出ししますね」

 彼女が黙れば、必然的に沈黙が流れる。
 やがてロビー階に着き、エレベーターのドアが開いた。


「お前、誰としゃべってんの?」

 俺はそう言い残し、先に下りてロビーを歩いた。
 少し間を置いて、彼女が小走りで駆けてくる足音が響く。


「待ってください。社長、やっぱり怒ってるんですか!?」
「別に」

 彼女が俺を名前で呼ぶ気配もなければ、付き合っている自覚が薄いようなので、少々苛立ってはいるけれど。