美魔王さまと結婚したなら
そんな私の出産も一週間後に迫っていた。
双子なので予定帝王切開で三十八週に入る日に手術が予定されていた。
しかし、この日私は朝から違和感を感じていた。
不規則にたまにツキツキとお腹が痛むのだ。
しかし、痛みは割とすぐに引くし、何より1時間に3回くらいなので気にも止めていなかった。
しかし、これは見逃してはいけないサインだったと気づいたのはお昼をすぎてから。
急に痛みが増して、その感覚は規則正しく十分間隔。
間違いなく陣痛である。
苦しみ出した私に、父は慌てて階下の明さんを呼びに行った。
ドタバタと、複数の足音。
「夏美!大丈夫か?!」
「まだ、大丈夫。さっき産院に連絡したらすぐ来てくださいって…。いったー」
再び痛みの波が来る。
ふうふう、何とか呼吸に意識を向けて痛みをやり過ごす。
そんな私の腰を明さんは摩ってくれた。
そして、痛みが引くと私はすくっと立ち上がりサッサと動き出す。
「お父さん荷物もって!明さん車のキー!病院行くわよ!」
テキパキと指示を出して大の大人を、ガツガツと使い、サクサクと動いてく様子を見ていたさっちゃんやいっちゃんは後に言った。
「もう、あの瞬間から夏美はしっかり者な母親だった」
そうにこやかに言われたのだった。