気がつけば・・・愛

少し指が触れるだけで
胸が苦しくなる

顔を上げられないほど高揚した気分は
意に反して涙を溢れさせた

小刻みに震える肩

ギュッと握ったままの両手を
大きな手が包み込み

おデコの辺りに
「大丈夫だから・・・」
魔法の声が降る

頬を伝う涙を住職の指が拭い

情緒不安定極まりない私の涙が止まるまで
住職はずっと側に居て

ポンポンと頭のてっぺんに手を置いて

「泣きたかったのは僕の方ですよ?
・・・・・・野村あゆみさん」

懐かしい名前を呼んだ



「え?・・・私の旧姓・・・なんで?」

化粧も流れたであろうお化けの顔を忘れて
目を大きく見開いて住職を見る



ニッコリ微笑んだ住職は


質問に答えることなく
固まる私を抱き寄せた


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