気がつけば・・・愛
予定の詰まった週が漸く終わり
心は既に良憲さんのことでいっぱいになっていた

ーー会いたいーー

一日中何度も何度も
メールをする

それはたった一行でも
心を満たす

朝一番に送られてくる
良憲さんの予定

互いの行動を知り
互いを思いやる

そんな小さな積み重ねで
益々心は良憲さんに向けられた

その要因はストレートな
気持ちの表現にあった

【あゆみさんに会いたい】


良憲さんの丸い目を思い出し
頰が火照る

【明日写経に来ませんか?】

返事のしやすい誘われ方に
躊躇うことなく【喜んで】と返信する

夫の予定をさり気なく聞き
遅いと分かると頬の緩みを隠すのに必死になる

【では明日】 《全削除》

携帯の画面をしばらく眺めていると

「最近よく携帯見てるな」

背後から夫に声を掛けられ肩が震えた
全身の毛穴が開くような感覚と
そこから汗が吹き出す気がして

「え?あ、これは
お料理教室で教えて貰った料理のレシピなの
すごく勉強になってて・・・』

顔が引きつる程の動揺を
悟られないように咄嗟に言い訳を並べた


「そうか」


冷蔵庫のお茶を飲むと夫は寝室へ消えた

ハァと溜息を吐き出し
トクトクと高鳴る鼓動を
落ち着かせるように
胸をトントンと叩いた

こちらにまるで興味なかったはずの夫
偶々、たぶんそう

自分がやましいと相手も疑う・・・とか

頭を過る沢山の言い訳と
同じ家に暮らしていながら
久しぶりに会話したことへの驚きより

削除したメールを思いホッとした


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