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檀家さんの親族の葬儀で
思いがけず出会ってしまったあゆみさんは
心が壊れそうな程傷付いていた


控え室へ聞こえてきた男女の声は
当事者でなくても心が折れそうな内容
相手を思いやる気持ちは1ミリも汲み取れ無かった

それがあゆみさんだと気付いたのは
扉を開いた瞬間だった

「あゆみさん、来て」

衝動的に控え室へと手を引いた

例えご主人にバレようとも
守ってみせると心が決まった


そっと手を伸ばして触れた肩も
小刻みに震えていて
キュッと締め付けられる胸を誤魔化せず

気がつけば
腕の中に閉じ込めていた

声を殺すように泣いているあゆみさんの背中をそっと撫で続ける


暫くするとポツリ、ポツリと
涙の理由を吐き出した


あゆみさんの震える肩と声に
こちらの胸が締め付けられるように痛む

聞いてあげること
癒してあげること

それだけしか出来ない自分が
もどかしいけれど

あゆみさんを別の意味で泣かせる訳にはいかない

あゆみさんを尊重して
待ってあげるしか・・・出来ない

でも・・・
本当は・・・

旦那さんの元へ帰したくない
自分の側で心を温めてあげたい

世間的に許されない感情を
持ってしまった罪を
受け入れる覚悟はとっくに出来ている

それを口にしようとした時


「もうやめます」

視線を合わせたあゆみさんの
強い眼差しに頭が真っ白になる


「え?」


待って下さいと言おうとした


「もう、お終いにします」


口元を少し笑顔にするように作ったあゆみさんを見て自分の気持ちを封印した


「ご夫婦のことですから
納得いくまで話し合ってください」


それだけ口にするのが精一杯で
涙を拭くあゆみさんを見つめていた