『この度マネージャーになりました嵯峨野花音です。一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。』

先頃大学に入学したばかりの花音は、兄の所属する同じ大学のバスケ部のマネージャーになった。

『花音ちゃん可愛い~♡』

ムギュっと小柄な花音を自分の胸に押し付けるように、桜子が嬉しそうに言う。

桜子はこのバスケ部の先輩マネージャーであり、花音の兄の大切な人なのだ。

『桜子ちゃん苦しいよう…』

こちらも嬉しそうに、まるで仲の良い姉妹のようなやりとりだ。


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『練習始めるぞ』

キャプテンが指示を出すと、40人はいるであろう部員達がそれぞれの列ごとにダッシュを開始した。

『うわあみんな揃うと壮観だなあ。お兄ちゃんも理人君も頑張ってる…ウフフ』

ニヤニヤしながら呟いていると、そこに十数人の見学の女子達がやって来て色めき立つ。

『キャー林葉く~ん。嵯峨野く~ん』

学年もまちまちな女子達は皆それぞれ声を掛ける。

『流石はバスケ部イケメンツートップね』

桜子がやれやれと少し呆れながら言った。

花音が思うに、桜子は彼氏である悠輝に黄色い声援を送られても、あっさり受け流しているようだ。

しかし花音自身はと言うと、許婚の理人が練習や試合の度にきゃあきゃあ騒がれているのを見るのは、複雑な感じがしている。

『そりゃあ理人君がモテるのは百も承知だけどさ、何だかイヤだな…』

そんな小さな呟きは誰にも拾われなかった。