入学してからの花音は、大人しい性格もあってか、なかなか自分から友達を作りに行けずにいたが、そこへいつもクラスの中心にいて、男女ともに人気のある国府宮昴(コウノミヤスバル)が声を掛けて来た。

『嵯峨野さんって、嵯峨野商事のご令嬢だよね?』

『え…?』

訝しげに昴を見る。

『ああ、ごめんな、急に声掛けて』

ううんと首を振り、昴の話を聞く。

すると彼は少し声を抑えて話し出した。

『実は、ウチの親父が君んとこの会社の経営企画室の次長なんだよ。それで、親父の話で、会社の御曹司とご令嬢がウチの大学にいるって騒いでいて、それが嵯峨野さん兄妹だったってわけ』

ああそうだったのと、急に昴に親近感が湧いて来て、ニッコリ笑うと、彼は顔を赤らめて俯き、あの…と言葉を続ける。

『あっそうだった。嵯峨野さんってバスケ部マネージャーでしょう?』

うん、と短く返事をすると、昴が突然花音の両手を取って、バスケ部に入部したいのだけれど、どうしたら良いのかと、花音に尋ねた。