お見合いだけど、恋することからはじめよう


そして連れてこられたところは、ショットバーだった。ここもまた、あの日「お持ち帰り」されたときに来ていたお店だった。

「よかった……ここは、あの頃のままだな」

赤木さんは無邪気に店の中を見渡しながら、年季の入ったハイスツールに腰かけた。
あたしも隣のスツールに座る。

カウンターだけでテーブル席のない鰻の寝床のようなその店は、三年前の面影を色濃く残していた。

「……今となっては、なにもかもが言い訳になるけど」

赤木さんは少年のように(ほころ)ばせていた顔を引き締めた。とたんに憂いを帯びた「オトナの男」になる。

「正直、武田専務から彼女との見合いの話があったときは……揺れた」

……なによ、それ?
全然、言い訳にもなってないじゃん。

あたしはカウンターに目を落とした。

< 343 / 530 >

この作品をシェア

pagetop