フレッドの、おいで、と言うときの声が好きだ。

 やわらかくてあたたかい。だけど、ほころぶ寸前の蕾のように今か今かと咲く瞬間を待っている、緊張感にも似たなにかを目いっぱい詰めこんだような。
 あるいは目の前にある、陶器のボウルにこんもりと盛られた艶やかな苺、のような。

 声を食べ物にたとえるのはおかしいかもしれない。

 けれど自分にだけ向けられるその声は、真っ赤な外見と反対に薄らと色を染めた果肉に似ていると思う。
 噛みしめるとじゅわりと口の中いっぱいに甘酸っぱさが広がる。咀嚼すればまたたく間になくなって、もう一つと器に手が伸びる。小さな宝石は口の中を甘い余韻で満たして、すうと消えてしまう。

 とにかくその声を聞いたら、返事をするよりも先に足が自然と彼に向かって動く。

 自分を見つめる空色の瞳、自分に向かって伸ばされる手、抱き寄せられる硬くて逞しい胸。それらはいつも「おいで」の声とともにあって、耳にするたび、オリヴィアは泣きたいような笑いたいような、くすぐったいような不思議な気分になる。

────その声とともに腰に彼の手が回された、今も。