その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
「ごめん、待たせた?」
そんな満面の笑顔で、今にも噴きだしそうな声で尋ねるなんてずるい。しかもわざわざ顔を覗きこんでくるなんて。それが彼の癖だとはわかっていても、確信犯的に覗きこまれると弱い。
ようやく解放された指は、空気に触れてひやりとするのに、じんと痺れたみたいだ。
「オリヴィア。頬に苺が」
フレッドが自身の頬を指先で叩く。オリヴィアは瞬き、意味を悟るや否や両手で頬を挟んだ。熱い。
フレッドが噴きだした。
「もう! からかわないで……」
「可愛いな。僕の奥さんは」
額にちゅ、と口づけられる。とろりと溶けそうな目で囁かれ、オリヴィアは口ごもった。長く「氷の瞳」と呼ばれてきたオリヴィアには可愛いという形容は対極に思えて、無意識に身を縮めてしまう。
「まだ慣れない?」
辛うじてうなずくと、フレッドが苦笑する。まるであやすみたいに、今度は眉間にやわらかな唇が落ちた。
「はい、お待たせ。味は僕のお墨付きだから安心して食べて」
オリヴィアが固まっているうちに、フレッドはひょいと苺を摘まんだ。口を開けるよう促され、オリヴィアはためらいながらも大人しく従う。
「いただき、ます。……おい、ひぃ!」
甘酸っぱい果汁がじゅわりと口いっぱいに広がる。当然のように指ごと差し出され、歓声がくぐもってしまった。
「この前は、まだ花も咲いていなかっただろう? いつ渡せるかと、母は機会をうかがっていたらしい。……はい、もう一つ」
そんな満面の笑顔で、今にも噴きだしそうな声で尋ねるなんてずるい。しかもわざわざ顔を覗きこんでくるなんて。それが彼の癖だとはわかっていても、確信犯的に覗きこまれると弱い。
ようやく解放された指は、空気に触れてひやりとするのに、じんと痺れたみたいだ。
「オリヴィア。頬に苺が」
フレッドが自身の頬を指先で叩く。オリヴィアは瞬き、意味を悟るや否や両手で頬を挟んだ。熱い。
フレッドが噴きだした。
「もう! からかわないで……」
「可愛いな。僕の奥さんは」
額にちゅ、と口づけられる。とろりと溶けそうな目で囁かれ、オリヴィアは口ごもった。長く「氷の瞳」と呼ばれてきたオリヴィアには可愛いという形容は対極に思えて、無意識に身を縮めてしまう。
「まだ慣れない?」
辛うじてうなずくと、フレッドが苦笑する。まるであやすみたいに、今度は眉間にやわらかな唇が落ちた。
「はい、お待たせ。味は僕のお墨付きだから安心して食べて」
オリヴィアが固まっているうちに、フレッドはひょいと苺を摘まんだ。口を開けるよう促され、オリヴィアはためらいながらも大人しく従う。
「いただき、ます。……おい、ひぃ!」
甘酸っぱい果汁がじゅわりと口いっぱいに広がる。当然のように指ごと差し出され、歓声がくぐもってしまった。
「この前は、まだ花も咲いていなかっただろう? いつ渡せるかと、母は機会をうかがっていたらしい。……はい、もう一つ」