エメラルドやペリドット、翡翠。
 それから、頭にグリーンと名のつくサファイアやガーネット、トルマリンにオニキス……。
 濃淡も輝きもさまざまな緑色をした磨かれた宝石(ルース)は、どれもオリヴィアの瞳に似ているようで微妙に異なる。王族御用達の店が用意した、いずれ劣らぬ一級品ばかりだ。だがうやうやしく並べられたそれらを前に、フレッドは腕を組んだ。

「まだ決められないのか? お前が優柔不断だったとは、長い付き合いだが初めて知ったな」
「僕も自分で驚いているよ、サイラス。だが、どれも良く見るとオリヴィアの瞳の輝きにはほど遠いと思わないか?」

 サイラスもまた、横から宝石を覗きこんだ。はたから見れば、男二人が夜も深まった王宮の執務室で、応接テーブル上に目を凝らし宝石を選ぶ光景は異様かもしれない。しかし少なくともフレッドはこのうえなく真剣であった。

「奥方の目が複雑な色だというのは、同意する。しかしな、俺はそろそろ帰りたいぞ! そろそろ俺のリリアナが切れる!」
「切れる? どういう意味だ?」

 尋ねておいて、フレッドはマーキス・カットを施されたペリドットをつまみ上げた。質の良さは折り紙つきである。形も若葉のようだが、その煌めきもまるで瑞々しい若葉が初夏の陽の光を散らしたようだ。

 だがどこか足りない。彼女の瞳は例えるなら森の奥を思わせる、もっと深い色である。

 質問しておきながら宝石を前に思案するフレッドに気を悪くすることもなく、サイラスが「よくぞ聞いてくれた」とソファから立ち上がった。