課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
7. これまでとはちがう…
 
 朝陽の中初めて結ばれた私たちは、遅めの朝食の後ソファーに座ってコーヒーを飲んでいた。
 
 「お見合い、来週の土曜だったよな。」

 「はい。でも実家に電話してきちんとお断りします。」

 「そうか…」
 
 腕を組んで考え込んでいる彼に

 「どうかしましたか?」

 と問いかけると、

 「…けじめ、きちんとつけようか。」

 「え?」

 「この婚姻届は、きちんと美弥子のご両親に許しを得てから出したいんだ。」

 そう言って雄一郎さんは、今しがた書き終わったばかりの婚姻届を手に取った。
 証人欄以外のすべてが二人の文字で埋められている。

 「もちろん私もそう思ってますが、でもお見合いはもう来週なんです。早くしないと…」

 「ああ、俺も早く美弥子を妻にしたいさ。」

 サラリとそんなセリフを言うので、顔が赤くなる。

 「あの…私は逃げませんよ?」

 「分かってる。逃がす気もないがな。」

 隣に並んだ私の腰を引き寄せて、耳元で甘く囁く。
 ほんの少し前の甘い時間が頭をよぎって、心臓が高鳴った。
 彼は、私の腰を抱いたままこめかみの辺りに「ちゅっ」と音を立てて口づけてから

 「全部まとめて片付けようか。」

 「まとめて?」

 「ああ。俺に考えがあるんだ。」

 そう言って、大胆不敵に微笑んだ。
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