彩月は、国立体育大を卒業後すぐに羽生コーポレーションに就職した。配属希望はもちろん、ウイングライフスポーツだ。

彩月は中学、高校と陸上部に所属していた。専門は中距離走。大学では中学と高校の保健体育教員免許をとったが、スポーツには本人の能力以外にも、道具が大切であることを身に染みて感じていたため、スポーツ用品店に就職したいと考えていた。

そしてこのウイングライフスポーツの魅力は各種教室も持っていること。希望のスポーツインストラクターからの指導も受けられるのだ。

いくらスポーツ好きでもプロになるのは一握りの人達のみ。


だからこそ彩月は、自身の知識と経験を生かして、スポーツを楽しむお客様と一緒に成長していけたらと日々頑張っていた。

「伊藤チーフはお客様からの評判もいい。売り上げもトップだ。駿太郎も伊藤チーフの近くでその技を盗むといい」

そんな言葉と羽生駿太郎を残して、笑顔の羽生社長と古山社長は本社へ戻っていった。


彩月は、やる気のなさそうなイケメン君を店舗奥のスタッフルームに案内した。

「同じ年だし"羽生君"でいいかな?」

「呼び方なんて何でもいいですよ」

「店長は今日、出張でいないので私がオリエンテーションもするね。後で他の店員やアルバイトも紹介します」

そう言って、駿太郎のデスクとロッカーに案内した。この店にはユニフォームがある。白シャツに黒のパンツ、黒のエプロンとまるでカフェの定員のようだ。

現在、店舗開店前の9時。10時開店に向けてやることはたくさんある。

今年は、駿太郎の他に4月入社の新入社員や異動者はいない。駿太郎の指導担当は、社長直々に彩月が指名されている。

熱血体育会系の彩月は、この無表情イケメンをどうやって攻略しようかと内心ではちょっとワクワクしていた。