基本、引きこもりの駿太郎は、顔はアイドル並みに可愛いのに誰にも心を開こうとしなかったため、これまで女性とデートしたことすらなかった。

ただ面倒くさかったのもあるが、御曹司という事で、社長である父やサッカー選手の兄と比較されたくなかったというのが大きい。

中には惹かれていた女性もいなかった訳ではないが、やはり何気ない会話の中で家族のことを聞かれたりすると、そんな気持ちも萎えてしまう。ようするに、その程度の関心しかなかったのだ。

この2週間、ずっと一緒にいたこととランニングという苦痛に耐えたことによる吊り橋効果なのか、彩月は駿太郎の精神安定剤になっていた。

彼女といると心が満たされる。彼女が他の男と微笑んでいるのを見ると心が乱される。こんな感情は知らない。

駿太郎は、休みの彩月も独占したいと思うようになっていた。

週休は2日とれることになっているが、指導関係にある彩月と駿太郎は同じクールで休みをとっている。

一人が好きだったはずなのに、彩月のいない先週の休みは、駿太郎の心にぽっかりと穴を開けたように空虚なものだった。

フルマラソン完走コースの第1回目を終えた後、2人で出かけた居酒屋とshot bar。彩月を独占できた嬉しさで満たされていた。

ちょっと酔っぱらった彩月もかわいかったし、優しく抱き締めてくれた彩月の体は柔らかかった。

"休みの彩月も独占したい"

"俺だけを見てほしい"

駿太郎は別れ際、その想いに翻弄されたまま

「9時に、モール前の駅の東口で待ってる」

と一方的な言葉を投げて逃げ帰った。

"来てくれないかもな"

自宅であるマンションのリビングのソファにドサッと倒れこむと、何気なくスマホを取り出してみる。

「デート、楽しみにしてるね(^-^)v」

他の奴が使ってる絵文字にはイラッとするのに、彩月からの返事に使われているものには愛情すら感じる。

無表情な駿太郎の顔に笑顔が宿る。気だるげだった駿太郎の態度は、一変してやる気に満ち溢れる。

駿太郎はワイシャツを脱ぎ捨てると、足早にシャワールームへ向かった。