無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
「私ね、小学生の頃、いじめられてたことがあるんだ」

彩月がボソッと言った。

「私に兄がいるのは知ってるよね?いつも兄の真似ばかりする私と同世代の子は話が合わなくて」

大人びたいい子の彩月のことが、幼い女子は気に入らない。少し目立てばばかにされ、なじられる。

『でも、いいんだ。あのカラスだって石を投げられても堂々と人間を見下ろしてる』

彩月にとってのカラスは憧れの存在だったと彩月は語った。

「真っ黒で何色にも染まらない孤高の存在。駿太郎のこのカラスもそんな風に見えるね」

駿太郎はぎゅっと彩月を抱き締めた。

無視されてもなじられても笑顔を絶やさず、凛としている彩月を見て、同級生たちはそのうちになにも言わなくなったらしい。

中学に入り、中距離走でメキメキと頭角を現してきた彩月は、男女共に憧れの対象となった。

誰に対しても平等に接するが押しつけがましくはない。簡単そうでとても難しいことだ。

「痛みを知ってる駿太郎はとても優しくてかっこいいよ」

"それはお前だろ"

少し離れた木の上に停まったカラスが

"カァ"

と間抜けな声を出した。二人は顔を見合わせて笑った。

「少し間抜けだけどね」



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