無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
いつものように彩月と並んで商品を補充したり、訪れたお客に対応していると、ある男性が二人に近づいてきた。

「サッカー用品を探してるんだけど」

「翔一朗さん」

「兄貴,,,」

帽子を目深にかぶり、フレームレスの眼鏡をかけたその男性は駿太郎の兄である羽生翔一朗だった。

サッカーの実業団一部リーグで活躍する翔一朗は女性からとても人気がある。

外出の時は、変装というほどではないが、目立たないようにいつも帽子と眼鏡をかけていた。

「久しぶりですね」

彩月がニコニコと対応している。

「俺が来てない間に彼氏とか作ってないよね」

「フフフ」

二人は想像以上に仲が良さそうに見える。

「おっ、駿太郎?頑張ってるらしいな」

無表情の駿太郎の顔がこわばっているのが彩月にもわかった。

「しゅ、羽生くんはとても頑張ってますよ。固定客もついてきてますし」

兄を翔一朗と呼び、駿太郎を羽生くんと呼ぶのが気にいらない。

しかし、家族の前では無表情がデフォルト。駿太郎は彩月を問い詰めたいのを我慢した。

「彩月ちゃん、今夜は空いてる?」

「いえ、ちょっと用事が,,,」

駿太郎はとうとう我慢ならずに兄と彩月の間に立ちはだかった。

「こいつ、俺のもんだから」
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