無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
五月の第二金曜日。モールの裏の運動公園にフルマラソン完走コースのメンバーと彩月、駿太郎、三嶋が顔を合わせていた。

「皆さんにお知らせすることがあります」

彩月と駿太郎はメンバーの対面に立ち、ランニング教室を始める前に、神妙な面持ちで言葉をつないだ。

「突然ですが、私伊藤と羽生くんは来週からサンフランシスコ支店に異動することなりました。フルマラソン完走コースを途中で投げ出すように形になることをお許しください」

彩月は、深々と頭を下げた。

「今後は、ここにいる三嶋さんがコースを引き継いでくれます。もちろん、私もグループアプリで皆さんの練習のフォローは続けますし、12月には、皆さんと一緒にフルマラソン大会に参加するために一時帰国するつもりです」

フルマラソン完走コースのメンバーは一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに笑顔になり拍手を送った。

「伊藤さん、サンフランシスコに栄転なの?遊びにいってもいい?」

「ええ、是非来てください。サンフランシスコマラソンもあるんですよ」

「12月に帰国したときに詳しく聞かせて。それまでに私たちも体力つけてフルマラソン完走できるようにしておくから」

会社員仲間の男女四人組が笑顔で彩月を囲んだ。

駿太郎もウィングライフインテリアのサンフランシスコ支店に異動になったことをみんなに伝えた。

その後は、三嶋を中心に今後のフルマラソン完走コースの説明と5kmの試走が行われた。

メンバーに嫌なことを言われることもなく、無事に引き継ぎを済ませることができた。

明日はいよいよサンフランシスコに出国だ。必要な荷物はすでにあちらの住まいに送ってある。

「いよいよだな」

「そうだね」

彩月と駿太郎はその足で成田空港近くのホテルにむかった。
< 68 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop