一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
1章
「お客様、そう仰いましても、本のタイトルか著者、それか出版社が分からなければお調べするのは難しいのですが・・・。」
「あんたねぇ、それでも本屋なの!?
 だから、この前新聞に載ってたダイエットの本って言ってるでしょう!!
 今話題の本って書いてあったわよ!!」

あぁーイライラする。

でも私だって一応、長年の経験がある販売員。
眉を下げ、本心とはかけ離れた、申し訳なそうな表情をつくる。

ダイエットに関する本はいつも人気があって、その時によりトレンドも異なる。
広いスペースをとり、流行りの本は平積みにしてPOPもつけて目立つようにしている。
そこにある本はどれも、探しているものとは違うと言うこのお客。

話題の本っていっても、広告の煽り文句のこともある。
せめて、タイトルの一部、著者名だけでも分かれば意地でも調べるのに。
どうしてそのくらい控えて持ってこないんだろう。

「もういいわ!こんな本屋二度と来ないんだから!!」
盛大に捨てセリフを吐いて立ち去って行った。

「お役に立てず、申し訳ございません。」
と、微塵も思っていないことを形だけ表してみる。
こっちこそ、あんたみたいなのはお断り。

佐々木紗良、29歳。
書店員。
イラついてます。

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