高桐先生はビターが嫌い。
真実のマトリョーシカ。

******


憧れの、広い遊園地の中。

空は清々しいくらいの青天。

その下で、長めの先生の話を聴く生徒達。


そんな先生の話を聴いているフリをして、こっそりと高桐先生に目を遣るあたし。

視線の先の高桐先生は、眩しそうな目をして生徒達のことを眺めている。

今日は、春の遠足。

大きなバスに乗って、数時間揺られて。

着いた先が、実はずっと楽しみにしていたこの遊園地。


あたしの視線の先の高桐先生が、隣にいる女の先生と静かに何かを話している。

何かの打ち合わせ…?

2人のその様子に首を傾げていたら、そのうちに2人は静かに笑い合って…。



「…?」



…何、話してるんだろ…。

そう思っていると…



「ねーえー、行くよ日向ー!」

「!」



その時。

高桐先生に集中していたら、いつのまにか説明は終わっていたようで、あたしはふと市川にそう呼ばれた。



「…あ、うん!」



……先生の話、全然聴いてなかったけど。

あたしは少しビックリしつつ、遊園地の入り口に待つ市川に駆け寄る。

でも…



「…ねぇ、本当にいいの?」

「何が?」

「市川、他の友達と回らなくて。誘われてたじゃん」



…あたしは少し気になっていたことを、市川に言ってみた。

だって市川は、あたしよりも友達が多いのに。

けど市川は、そんなあたしに笑って言う。



「…ああー。いいのいいの!あたしが決めたんだし」

「けど、」

「それに、」

「?」

「なんか、日向と一緒にいると、なんとなーく高桐先生とも近くにいれるような気がして」
< 138 / 313 >

この作品をシェア

pagetop