一途な御曹司に愛されすぎてます
 この後はもう帰宅するだけだから、必要最低限のメイク直しで十分。着替えを終えた私も同じように鏡を見ながら、パウダーを軽く頬に叩いて答えた。


「あくまでも大まかな発案だけね。細かく詰めるのは担当の栄養士さんだから」


 私の提案した企画が本格的に動き始め、各部門の担当者が揃っての話し合いが着々と進められている。

 もちろん私もチームの一員として忙しい日々を送っていた。

 なにしろ発案者ということで発言を求められることも多い。

 今回みたいに慣れないことにも初挑戦しなきゃならなくて、緊張や戸惑いばかりの毎日だけれど、とても充実した日々を過ごしている。


「忙しくて大変ね。張り切って仕事している淳美はすごくカッコイイよ。でも大丈夫なの?」


「うん。オーバーワークで体調崩したりしないように、ちゃんと気をつけてるよ」


「そうじゃなくてさ。……もう本当に納得してるの?」


 鏡からこちらに視線を移した美千留の抽象的な言い回しから、彼女がなにを言わんとしているのかわかって、とっさに返事ができなかった。

 適当な言葉を探す頭の中で、古城ホテルの様々な情景と、そこに佇む長身の男性の面影が鮮明によみがえる。
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