「さあ、ホテルに着いたぞ」

 彼の言葉を合図のようにリムジンが徐行し始め、ゆっくりと停止した。

 白い制服を着たドアマンが開けてくれたドアから車を降りた階上さんが、「どうぞ」と私に手を差し伸べてくれる。

 その仕草があまりにもスマート、かつ自然で、彼に手を預けながらつくづく感心した。


 サービス業界の人間として身に着けた技能と言うより、もともと他者に対して丁重な姿勢を崩さない人なんだろう。

 古城ホテルでも庭師さんたちとずいぶん仲が良さそうだったし。

 強引な人だけれど、口調や仕草を飾らなくなった分、彼のそういった本質がいっそうよく見えるようになった気がする。


「ちょうどいい時間帯だ。今が一番夕日が映える頃合いだよ」


 潮の香りの混じった夕刻の風が、階上さんの前髪を靡かせる。

 彼の視線の先には、お洒落な赤茶色の屋根とアーチ状の大窓が印象的なスパニッシュスタイルのホテルが、威風堂々と建っていた。

 昼間は青空の下に際立つ真っ白な壁が、今は夕日に照らされて綺麗な琥珀色に染まっている。

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