一途な御曹司に愛されすぎてます
シンデレラの現実
「メディカル・福祉食品部門のユニバーサルデザインフードを、もっと他部門でも活用すべきだと思うんです」


 五月の中旬。
 日差しと気温がどんどん春めいてきたかと思えば、急に気温が下がったりもして、長袖シャツやカーディガンがなかなか手放せない。

 今日は天気がいいから、『ヤマザキ総合卸フード』三階の小会議室の窓から、遠くに流れる大きな川や山の峰もよく見えた。


 短大を卒業後に入社して以来、私がずっと勤めているこの会社は、病院食や学校や飲食店等に食材を卸している食品会社だ。

 八十年ほど前に小さな個人商店から始まった店が、現在では各市に支店も出すほど大きくなって、十年前に市の中心から外れた場所に本社を移転した。

 窓から見える景色は田んぼがメインという長閑な小会議室で、私は数ヵ月かけてやっと練り上げた企画を、食品営業本部の人たちを前に必死にプレゼンしている真っ最中だった。
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