ラヒの預言書
⒎ ソルの誤想

割れる様な頭の痛みに促されて、ソルは重い瞼を持ち上げた。

途端に襲ってくる吐き気に眉をしかめる。


「.......うぅ.......何これ.......頭痛いし、気持ち悪いっ.......」


こめかみを押さえながら、体を起こそうとすると、首の下に何やら温かいものを感じた。

無意識に掴んで目をやると、人の腕がそこにはあった。

見慣れない筋張ったそれは、確かに男のもので、ゾワっとした恐怖が一瞬にしてソルの背中を蹂躙する。

ドカドカと心臓が鳴り響く中、恐る恐る後ろを振り返ると、そこには静かに寝息を立てる、キルバルの顔があった。


(っ!!!!!)


「なっ何でっ?!!えっ?えっ?」


思わず出てしまった自分の声に、慌てて手で蓋をする。

改めて視線を戻すと、やはりそこにはキルバルが寝ていた。

色素の薄い綺麗な髪が朝日に反射してキラキラ輝いている。

長いまつ毛は頬に薄い影を落とし、まるで人形の様で何とも神秘的だ。


「.......綺麗.....」


100人中100人がそう応えるだろうと思った。

同じ人間でもこの人を見ると、やはり選ばれた人だと思い知らされる。

そんな事を考えながら無意識の内に見入っていると、不意に手を掴まれた。


「ゔぇっ?!!」


「.......もう起きたのか?」


「はっはいっ?!!」


「.......身体は大丈夫か.......?辛くないか?」


「少し吐き気と頭痛がしますが、大丈夫ですっ!!」





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