ラヒの預言書
2.旅立ち

「ソル!ソルや~っ!!」


「はい、何ですかトリノ先生?」


「ソル!何ですかじゃないですっ!!何回言ったら分かるのですか!?ガロン(平民)は他の勉強などしなくていいのです!それより商人となって、少しでも高く利益を出す為の勉強をしなさい!!」


「何故です?」


「いいか?よく聞きなさい。お前は頭がいい。もっと勉強すれば、必ず大商人となれるだろう。そうすればー」


「何故商人に成らねばならないのですか?誰が決めたとゆうのですか?」


「誰が決めた訳では無いが、ガロンの身分では商人に成るのが一番食べて行く事に困らずにすむ。豪商と成れば身分を上げる事も出来よう」


「身分とは何なのですか?私とフジャンの何が違うというのですか?…私は絶対嫌です!!私は神にお仕えする神官に成ります!!」


「なんと!?いくらお前でもガロンが許される最高地位とは……。本気なのですか?!!」


今日だけは絶対引き下がらないと、トリノ先生の目を強く見据えた。


「たっ確かに、今、ガロン出のアルトエ様が大神殿の神官第二位の地位、副神官の座に居られるが、アルトエ様は、本当に稀有な御方です。それに神官見習いの試験はお前には不利な事が多い。試験勉強だってしてないではないか!」


「先生には反対されると思って、今まで黙っていましたけど、試験の準備はずっとしてきました!!」


トリノは、一瞬驚いた様に両目を見開いたが、直ぐに険しい目に戻った。


「っ?!!.......いいえ、ソル。考え直しなさい。何故わざわざ苦労する道を選ぶのです。神官の殆どがデルガ(貴族)の出、そんな中にお前が入れば良くは思われないでしょう。お前には、親の分も幸せになって欲しい、普通の幸せを掴んで欲しいのだ。…それに、いくら試験を受けたがってもソルダン(町の学校)の師からの推薦が無くてはその資格すら持てぬ……いや、そんな事より決定的に不利な所がお前にはあるではー」


「その事なら...........私が推薦しました」


「トエト先生!!」


「トエト……?またお前は私に黙って...........…」


「先生、私は必ず大神殿の大神官になって見せます!!ギルドラ(王族)やデルガ(貴族)に干渉を受けず、同等に対抗出来るのは大神殿の大神官だけです。先生……私の願いをご存知でしょう?私はどんな非難にも負けません!絶対成って見せます!!」


「ソル……」


力無く椅子に座り込むと、トリノは、顔を両手で覆い、深い溜め息を吐いた。


「行って参ります」


トエトの前にそっと跪づくと、彼女はそっと額に手をかざした。


「太陽より出でし大地の子に、レルーガより加護があらんことを……」




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