ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
恩返しをお望みですか
目覚めたら人生が大きく変わっていた、というドラマや漫画を見たことはあるが……。

「えっ！　あの現場、クビ……ですか？」

病院のベッドで目覚めた私がリアルにそれを体験するとは思ってもいなかった。これは夢かもしれないと頬を抓るが……痛かった。現実だ。

「当然の処分だろ？　君は丸東建設の副社長である東條寺拓也様に怪我を負わせたんだよ」

派遣会社から飛んできた担当者の顔は思いっきり青ざめていて、おまけに物凄く迷惑そうだった。

あの時、私は鳥になったのではなく、眩暈を起こして階段から足を踏み外したそうだ。

救命救急センターの医師から『眩暈は過労の上に風邪で熱があったせいです』と説明を受けた。

だが、運良く？　いや、運悪く落っこちた先に副社長がいた。
副社長は降ってきた私をジェントルマンよろしく受け止めたらしい。

でも……彼は骨折してしまった。

それを聞いた時、あまりの恥ずかしさで穴があったら入りたかった。きっと私の重さに耐えきれなかったのだと思ったからだ。

奈落の底に落ちたような溜息を吐く私に、派遣会社の担当者は追い打ちを掛けるような言葉を言った。

「賠償問題に発展するかもしれない……」

賠償？　事と次第によると派遣会社もクビだと言う。

「問題解決まで自宅で待機するように」

まるで死刑を言い渡された死刑囚みたいだ。『オーマイガッ！』と絶叫したい心境だった。

『とにかく誠意を見せるんだ。気分がいいのなら帰る前に最上階にある特別室に行って謝ってくるんだ』

担当者が帰りがけに命令するように言った。
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