俺様外科医の極甘プロポーズ
3.先生の過去

壱也先生が自宅療養になってから二週間がたった。

最近は晴也先生の姿を病棟で見かけることが多くなっていた。壱也先生が来てからというもの、よほどの用事があるとき以外は寄り付かなかったのに、どうして?

晴也先生は看護師を呼び止めては話し込んだりしている。私は忙しく病棟内を駆け回っているせいで晴也先生に呼び止められることはなかったけれど、いったいどうしたのだろう。嫌な予感がする。

「ねえ聞いた? 壱也先生の話」

 昼休みの休憩室で、ひとりがそう口に出すとみんなが堰を切ったように話し始める。

「聞いた聞いた!」

「私も聞いた!晴也先生が医療ミスしたとか院長にうその報告をして辞めさせようとしているんでしょ?」

「院長を支えながらこの病院を守ってきたのは誰だと思ってるんだよって話」

「壱也先生は、病院ごと乗っ取って金儲けしようとしているらしいじゃない」

「本当に悪い男だよね、あいつ」

聞くに堪えない話だ。こんなふうに壱也先生を貶めるような情報を流したのは誰なのか。それはもうわかっている。最近よく病棟で見かけるようになっていたあの人だろう。
ひとしきり話し終えた看護師たちは「晴也先生がかわいそう」の大合唱をしている。

「こんな話、全部嘘に決まってます!」

私はそういわずにはいられなかった。壱也先生は自ら悪役になって、病院を立て直そうと必死で頑張っている。

これはまぎれもない真実だ。だからみんなが知るその話は、壱也先生を陥れるために晴也先生が付いた嘘だ。なんて卑怯なことをするんだろう。怒りが、こみ上げてくる。

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