俺の彼女が一番可愛い!
どうぞよろしく
 同じ大学の人たちだろうな、程度の認識はあった。今日の健人のバイトはラストまでだった。

(…多分、大学祭の話してるし。同じ大学だろうな。)

 厨房が客のいる方に面しているため、会話や人の雰囲気は料理の片手間に見ることができる。今日はいつもよりも人の入りが多いと思ったら、どうやら大学祭の話を学科で集まってしているらしい。
 もっとも、何のサークルにも所属していない健人は大学祭などほぼほぼ出ないのだけれど。むしろ、大学3年の今、就活は少しずつ始まっており、健人と言えばインターンシップに参加してみたり、面接の練習をしたりしている。

「健人、ちょっと量が多く出そうだなぁ。」
「ね。たくさん食べそう。」

 ここのパスタ屋のオーナーは健人の遠い親戚だ。両親を失った健人の面倒を見てくれた、恩人でもある。健人が大学生になってからはバイトしないかと声を掛けてくれた。
 料理が意外と楽しいと感じるようになり、今や厨房はほぼ一人で回せるくらいになった。料理の腕前も上がるし、それでいて給料は貰えるのだから一石二鳥である。

「じゃあ、これ頼むよ。」
「はい。」

 出されたオーダー表。結構大変な量だ。まずはサイドメニューから手早く仕上げていくことにする。

「でさ、相変わらず岡田は片想いしてんの?」
「今それ関係ないだろ?」
「いや、大学祭で彼女と回りたいって思わね、フツー。」
「だよなー。」
「彼女持ちは余裕でいいよな、うぜぇ。」

 岡田と呼ばれた人には片想いの人がいるのか、なんて盗み聞きしながら健人は手を動かす。自分はここで、少しずつ好きになったなんてことを思い出しながら。
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