7・2 の憂鬱
それから、どれくらい時間が過ぎたのだろう。
夏の陽が跡形もなく消えていることを思えば、夜も深い時間帯なのだろうか?
わたしはゆっくりとシーツから上半身を抜け出させた。
「ん・・・」
眠っている戸倉さんが、身じろぎしてわたしの腰に腕をまわす。
けれどその力は本気ではなくて、わたしはそっと恋人の腕をすり抜けた。
いくつかある枕にもたれかかり、裸の胸にシーツを引っ張りあげながら、傍らの戸倉さんを眺めた。
どちらかというと眠りが浅い方だと聞いたことがあったけど、今はこんなにぐっすり眠っていて、出張の疲れを色濃く感じた。
抱き合ったあと、二人して眠りに落ちた。
眠る間際まで、わたしを離さなかった戸倉さん。
これからまた毎日顔を合わせる日々がはじまるのに、もう待ちきれないとでも言うような彼の温度に、わたしは終始ドキドキして、胸いっぱいになった。
彼の眠りを妨げないよう、コソッとその前髪に触れてみる。
いつもの整えられたものではなくて、シャワーを浴びたあとの、自然な手触りに、静かに愛しさを感じた。
こんなに好きな気持ちを、わたしが誰かに向けられるとは、思ってもいなかった。
まるで息をするように「好きだよ」と告げてくれる戸倉さんに、わたしも、ちゃんと想いを返せてるのだろうか。
まだまだ不慣れで未熟な恋人だけど、彼のために、頑張りたい・・・・
心の中でそう誓ったわたしは、またシーツの中に潜り、戸倉さんの頬に唇を寄せた。
健やかな寝息に安らぎを感じ、一人でないことに泣きそうなほどの喜びを感じた、
そんな二人きりの夜だった。
二人きりの夜【番外編】(完)