7・2 の憂鬱




会議室の一件から、戸倉さんと一度も話さない日が続いていた。

といっても、戸倉さんの仕事が急に忙しくなったみたいで、ほとんどデスクにいなかったのだ。

出社してる形跡がある日もあれば、一日中外のこともあったけれど、出社もかなり早朝にしているようで、わたしとニアミスすることすらなかった。


そうこうしてる間に7月になり、わたしは、気が付いたのだ。


もしかしたら、戸倉さんに、避けられてるのかな・・・・


そう思ったら、とたんに胸が痛くなってしまった。


自分から距離をおいたくせに、戸倉さんから同じことをされるとショックだなんて、自分勝手もいいとこだ。


そして訪れた自分の誕生日に、去年のことを思い出して、感傷的になったりして、自己中極まりない。


だけど・・・・



去年、7月1日、仕事終わりに『ちょっとご飯でも行こうか』と軽く誘われた。

戸倉さんとは、それまでに何度も食事をしたことがあったので、特におかしなことではなかったのだけど、その日はいつもとは違って、一度は断ったわたしを尚も誘ってくれたのだ。

一番お世話になってる先輩の誘いだし、二人で出かけるのがはじめてでもなかったことから、わたしは、三度目の誘いに頷いたのだった。

そして連れてこられたのが、有名ホテルのイタリアンレストランだったというわけだ。


なぜ誕生日当日ではないのか訊けば、戸倉さんはちょっと申し訳なさそうに、『誕生日は特別な人と過ごすかもしれないと思って』と言った。

わたしが『そんな人いませんよ』と返すと、

『じゃあ、僕と一緒だね』

柔らかく笑ったのだった。












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