ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
第七章◆さよならの告白


「クソッ!ネロはどこだ!貴様ネロを呼べ!」

ハインリヒはダークナイトの胸ぐらを掴みあげて怒鳴り声を上げていた。

しかし、それを掻き消す勢いの歓声に包まれていた会場を、私達は素早く飛び出していく。

騒がしさから抜けて、シュヴァルツさんの足音だけが響く廊下が続き、私は黙っていられなくて口を開いた。

「シュヴァルツさんは、どうしてこの会場に……」

彼は長い廊下を駆け抜けながら、私の質問に答える。

「アカリが作っていたリストを見て、連れ去られた人間がオークションに出品されると確信した。捕まっている人間たちを助け出すには競り落とすのが一番早い。……アカリこそなぜここへ来ている。アルバはどうした」

「あっ!」

そういえば、アルバさんの安否が分からないままだった。

受付でダークナイトと入れ替わっていたのなら、彼はやはり、リストが見つかって捕まってしまったのだろうか。

私が青い顔をすると、シュヴァルツさんはそれ以上聞かなかった。

「心配するな。奴は自分の身は自分で守る」

彼がアルバさんについてそう言及したのは私を慰めるつもりだったのかもしれないが、私はさらに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

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