ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
第三章◆月夜の吸血
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闇に飲み込まれてからしばらくすると、頭上からシュヴァルツさんの「目を開けろ」という声がした。
言われたとおりにすると、そこは夜の街の上空だった。
下に広がる街には無数のオレンジの灯りがともり、賑やかな人々の声がざわめきとなってここまで聞こえている。
私たちは空に浮いていた。
とはいっても、重力がないシュヴァルツさんとは違い、私の体の重みは彼の腕で支えられている。
抱かれながら目を戻すと、シュヴァルツさんの背中には真っ黒な羽が生えており、それが風に揺らめきながらゆっくりと動いていた。
「わぁ……」
その黒い羽の向こうには、大きな月が浮かんでいて、私は光と影のコントラストに、思わず声を漏らすほど目を奪われた。
意思を持った羽は、犯人のシルエットで見たときはとても不気味だったのに、シュヴァルツさんのは不思議とそう思わない。
むしろ、すごく綺麗……。