年下御曹司は初恋の君を離さない
6



「副社長、おはようございます」
「おはよう、未来さん」

 友紀ちゃんは何か言いたげにしたあと、小さく笑う。
 きっと、私が友紀ちゃんのことを副社長と呼ぶことが気にくわないのだろう。だけど、私の気持ちを察して言えずに苦笑した。そんなところだろうか。

 副社長の専属秘書が上司に対して友紀ちゃんなどと名前で、それもちゃんづけで呼べるわけがないことは理解してくれているらしい。
 だけど、本心では名前呼びをしてもらいたいと思っているのだと思う。わかっているが、ここは職場。仕事をする場所だ。馴れ合いはよくない。

 なんて言うのは建前だ。私がここで彼のことを友紀ちゃんと名前呼びをしてしまったら、私たちが出会った頃の私に戻ってしまう。
 そう思って、初めは友紀さんと呼んだ私だが、やっぱり無理だった。
 友紀と名前を出すだけで、今までのことを――特にキスのこと―――思い出してしまい、仕事にならなかったからだ。

 そこで、副社長と呼ぶようにしたのだけど……どうやら本人はご不満の様子だ。


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