翼の折れた鳥たちは
リハビリ室の出口を出る直前、敦也くんが私の方を振り返った。

「葵ちゃん!!」
「なに?」

「俺と葵ちゃん、どっちが早く新しい世界に飛び出すか競争だよ」

「へっ?」

予想外の敦也くんの提案に呆気に取られて、驚きの声をあげてきょとんとしてしまった。

「じゃあ、また来週。葵ちゃん、お疲れ様」

「おっ、お疲れ様でした」


敦也くんは、その場に立ち尽くした私を見て、いたずらな笑みを見せるとリハビリ室を後にした。


競争って言われても。
私、歌手を目指すなんて一言も……。

敦也くんの小さくなる後ろ姿を見つめながら、敦也くんとのやり取りを思い返していた。
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