翼の折れた鳥たちは

「あっ、部長。お疲れ様です」

「お疲れ。星原さん、まだ居たのか?」


普段は、帰り支度を済ませて屋上で歌を歌って社員寮に帰るのが私のルーティン。

きっとユニホーム姿のまま事務所に戻ってきた私を、まだデスクで仕事をしていた部長が不思議そうな顔で眺める。


「榎田さんの治療のことが気になってしまって」

「へぇ」

「昨日、リクライニング車椅子から車いすへ移行できました」

「知ってる。看護師長が言ってた」

少しだけ目を細めて微笑んだ部長の視線が、なんだかくすぐったい。

私は自分のデスクに座り、乱雑に積み重ねていた『脊髄損傷のリハビリテーション』という文字が並ぶたくさんの参考書を読み始めた。


< 56 / 290 >

この作品をシェア

pagetop