混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
プロローグ
 丘の上の青い屋根海を見下ろす家の庭で、イライザはいつも木に登っていた。

 庭の木に登り、ながめた先の海、そこを行き交う船を見るたびに、イライザは思ったものだ。

 あの船に乗ったら、どこまで行けるのだろう。

 そこには、どんな人が居て、どんな生活を送っているのだろう。

 イライザの興味は果てが無く、気まぐれな雲のように、ひとつところに留まるという事が無かった。

 白い肌にソバカス、赤毛を無造作におさげにしていたイライザも、成長し、化粧をおぼえ、赤毛が鈍い銅のようにつややかになった頃。

 歳相応の落ち着きを見せる事もありはしたが、本質的には木登り好きなお転婆娘は、行動的な記者となり、自立した職業婦人としての風格すら漂わせるほどに成長した。

 ……しかし。

 イライザの父は、海運で財を成した商人だった。

 ブルー・ムーン商会といえば、まだまだ小規模ではあるが、それゆえに融通がきくという事で、目下売り出し中の海運会社である。

 父としては、一人娘のイライザには、婿をとって、自分の後を継いでもらいたいと常々考えていた。

 元気がよすぎるところも、商売人の妻にはふさわしいものであったし、学識高い女性というところを生意気と考えるほど、イライザの父は保守的では無い。

 しかし、娘が結婚するつもりは無い、と、発言すると、さすがにひと言言ってやりたくなるようで……。
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