「隣の家か? 元々は、とある高官の屋敷だったと聞いているが……今の持ち主についてはよくわからんな」

 既に近所の情報収集は終えていたらしい。兄のパトリックは肩を竦めた。

 彼の話だと、以前は有力貴族が住んでいたらしい、などと噂もあるものの今の屋敷の持ち主については不明で、結局は近所で評判の幽霊屋敷という噂話くらいしかわからない。だが兄はそれを笑い飛ばす。

「お前の言うカフェ経営が何だかよくわからんが、隣が幽霊屋敷でも、この立地条件は飲食店をやるには最適な場所だからな。やるならキッチリ利益を出せ。男爵の遺産を食いつぶすんじゃなく、増やすのだ。コールドウェル家の家訓だぞ」

(私、もうコールドウェルの人間じゃないんだけど……)
 アンナはサヴィニャック男爵に嫁に行き、夫を亡くした未亡人なのだ。公的にはサヴィニャック男爵家の人間になる。

 常からの兄の酷い扱いに文句を言いたいが、男爵死亡後にきっちり遺産を受け取れるように段取りしてくれたおかげで、今夢のカフェをオープンできたのだ。……兄はがめついが仕事は出来る男なのである。

 ちなみにコールドウェル商会は、兄が父から受け継いだ店なのだが、そこそこの商人だった父に比べ、兄は辣腕で、代替わりしてからかなり儲けを出しているらしい。

 本人曰く『金を愛し、金に愛された男』。
 まあそんな兄のフォローもあって、無事カフェはオープンしたのだが……。

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