Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

side 啓輔


彼女と出掛けるために、この数ヶ月観察して得た情報から秘書課の沖さんとコンタクトを取る。


沖さんは橋詰さんと同期で仲が良い。
職権濫用で入社エントリーの履歴書を見れば、二人は高校の同級生と分かる。

昔からの付き合いであるなら、彼女に起きた事も知っている筈だ。


それを見越して俺は、沖さんに定時後に声をかけた。


「沖さん、すみませんが内密な話がありまして。今から専務室来れますか?」

突然の声掛けに、戸惑いを見せる沖さん。
彼女も秘書課の中では異色で、俺に色目を使わずきちんと仕事をしてくれる優秀な秘書だ。


そうして俺は定時後に、思いっきりプライベートな事を仕事以外で初めて話す相手に洗いざらい話して協力をお願いした。


ここに二年居る彼女には、今までの来る者拒まず去るもの追わずなお付き合いはバレている。
かなり不利なのは分かっているが、俺は彼女に本気なのだ。
なりふり構っては居られないんだ。


「菜々子を秘書課に、それも専務付きにする事には何ら依存はありません。元々彼女は優秀で今の経理部しかり、海外事業部でも秘書課で秘書も充分務まると思います」

それに、パッと俺は顔を上げて安堵する。

「しかし、専務は既に出だしをお間違えですからね?まぁ、菜々子も一夜限りの覚悟でついてったと思うので…。そこからの巻き返しは大変ですよ?菜々子を泣かさないでくださいね?」
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