Sweet Summer Valentine
「願いごと、書いてみたら?」

と、愚痴をきいてくれて、面倒見のいい年上の女性先輩から折り紙を長細くきった赤い短冊を渡された。

子会社の入り口に飾るための営業宣伝用にと部長が張り切って本物の笹を枝ごと持ってきていた。

事務仕事を片付けながら、手の空いたひとから七夕用の飾りをつくっていく。

「子供じゃないんですから」

「わがままなのは子供も大人も一緒よ。ほら」

と、先輩は強引に黒いマジックペンを差し出した。

しぶしぶ『好きなひとと会えますように』と書いた。

「これでよし、と。で、彼はどうなの?」

「それが」

「連絡ないんだ」

黙って首を振った。

最近になって忙しくなったのか、メールも電話もどこか中途半端で海外にいって女のカゲがあるのだろうか、と勝手に妄想しては悔しい気持ちが募っていた。

「大丈夫でしょう。きっと願いは通じるんじゃない?」

当人同士じゃないからって気まぐれなこといわないでよ先輩、と心の中でせめる。
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