独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
三乙女のレースを取り巻く陰謀
 アーベルとの契約って、どこまでなんだろう。

「……この状況、おかしいですよね?」
「そうか?」
「そうか、じゃないですよ——!」

 なぜか、アーベルの馬に乗せられて、城から城下町まで連れ出されている。それはまあいいと言えばいいのだけれど、お忍びに付き合わされるのはどうかと思う。

 だって、お忍びで出かけるアーベルに付き合わされても、お忍びなのだからフィリーネと一緒にいると見せつけることにはならないんじゃないだろうか。

 街にこうやって街に出てきた人達のために、馬を預かってくれる宿屋もある。そのうちの一軒に馬を預けておいて、アーベルはフィリーネを街へと引っ張り出した。

 おかしい。絶対におかしい。

 フィリーネの方は、自分の国にいる時のような格好なので、今日は地味な格好だ。ユリスタロ王国にいる間は、自分で商店まで買い物に行くこともあるので、人でにぎわう場所に出かけるのには慣れているつもりだったけれど、自分の国と比べたら、出ている人の数はだいぶ違う。
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