"鬼"上司と仮想現実の恋
「そっか。
じゃあ、イルカショーは見なきゃね。」


しかし、私は、入館してすぐに、シャチに釘付けになった。

「かわいい〜！！
あ、こっち来るよ！」

シャチが正面からやってきて、ガラスの直前で左に向きを変えて去って行く。

「キャー、かわいい〜！
ようこそって言ってくれてるみたい。」

ガラスに張り付いてる子供たちの後ろではしゃぐ私を見て、悠貴さんは笑った。

「俺には、そんな暁里の方がかわいいよ。」

そう言って、私の腰に手を添えた。

涼しい水族館の中。
悠貴さんの温もりが心地いい。

私はずっとシャチを眺めていたが、悠貴さんにイルカショーに間に合わなくなると言われて、しぶしぶその場を離れた。

が、今度は、ベルーガに釘付けになってしまった。

「ベルーガもかわいいね〜。」

輪っかのおもちゃを鼻先に引っ掛けて潜って遊ぶ姿は、とてもかわいい。
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