"鬼"上司と仮想現実の恋
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18時。

駅前の居酒屋で歓迎会が始まる。

今日は、私のわがままで、田中君を引きずり込んだ。

私は悠貴さんと田中君の間に座る。

「部長たち、どんだけ仲良しなんですか。
職場が一緒で、住んでる所も一緒なのに、
飲み会でもそんなに引っ付いて座るん
ですか?」

田中君が呆れたように言う。

「羨ましかったら、田中も彼女、作れば?」

悠貴さんが言う。

「別に羨ましいわけじゃありませんよ。
呆れてるんです。」

「ははっ」

と悠貴さんが笑う。


「そうそう、部長!
なんで今月も私と田原さんの目標額、一緒
なんですか!?」

私が言った。

「そりゃ、瀬名なら、できると思ってるからに
決まってるだろ?」

悠貴さんが言う。

「無理です!
下げてください!!」

私が言うと、

「大丈夫!
瀬名なら超えられる壁だよ。」

とにっこり笑う。

「じゃあ、私の目標を一千万削って、
田中君にあげてください。」

「うわっ!
瀬名、なんて事言うんだ。
お前、ひでぇな。」

田中君が呆れた。

「田中君なら、大丈夫だって。」

私が言うと、

「お前、俺の目標、瀬名の1.5倍だぞ。
それで俺に振るとか、お前こそ、"鬼"だな。」

と言った。

「ひどい!
部長、田中君が私の事、"鬼"って言いました!」

私が悠貴さんに言うと、

「お前、そこで男に泣きつくって、卑怯だろ?」

田中君がむくれる。

「ははっ
瀬名だって、俺の事、よく"鬼"って言ってる
じゃん。
"鬼"の嫁は"鬼"で合ってるんじゃないか?」

悠貴さんが笑って私の頭をぽんぽんと撫でる。

「悠貴さん、ひどい…」

私は、上目遣いで悠貴さんを睨んだ。

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