"鬼"上司と仮想現実の恋

私たちは、仏間で促されるまま、挨拶をして縁側から庭に出る。

そろりそろりと歩を進めて、所々で止まって悠貴さんと共にお礼のお辞儀をする。

両側に並んだ近所の人の声が聞こえる。

「暁里ちゃん、綺麗ね〜」
「美男美女やね〜」
「おばあちゃん、お菓子まだぁ？」

ふふっ
お菓子を待ちわびる子供の声に、思わず、笑みが零れる。

なんか、ちょっとだけ、緊張もほぐれた気がする。


後部座席の屋根が上がる花嫁専用のハイヤーに乗り、悠貴さん宅へ向かう。


悠貴さん宅で白無垢から色打掛に着替え、頭も綿帽子から角隠しに変わる。

また、悠貴さん宅の仏間で挨拶をして、縁側から庭に出て、悠貴さんの後ろを歩く。

私の憧れの花嫁さんになれて、それも大好きな悠貴さんの花嫁さんになれて、感無量だ…
もう一生分の幸せを使ってしまったかもしれない…