新しいことを始める前日って、ドキドキして、いろいろ心配で寝付きが悪い。
そのくせ、朝方になるとなにかが吹っ切れてしまうのか、夢付きの眠りに入ったりするんだよなぁ。

何度目だかわからないスヌーズ機能で鳴っているスマホを、ようやく止め、時間を見て一気に青くなる。


「やっばーい!」


出勤初日だというのに寝坊した。
ああもう、私ってどうしてこうなの!
しっかりやろうと思っているのに、いつも肝心なところでポカをする。

高速で顔洗って化粧して、朝ご飯はゼリー飲料だけで出発。
満員電車でスーツの人の群れにぎゅうぎゅうにつぶされながら、朝方に見た夢を思い出していた。


昔の記憶の夢だった。

私が六歳で、兄弟は千利しかいなかった頃の話。
うちは父さんも母さんも子煩悩で優しいから、自分が愛される存在だと信じて疑わなかった。


あの日、私は王子様に会ったのだ。

キラキラと自ら発光しているんじゃないかって思うような明るい金髪と整った顔に宿る、こげ茶の瞳。
王子様みたいなその男の子は、お父さんの職場の同僚の息子さんだった。

お父さんは居酒屋に勤めていて、収入だってそんなに良くない。その同僚の息子さんなんだからよく考えれば決してお金持ちなわけではなかっただろうけど、当時シンデレラが愛読書だった私には、金髪ってだけで王子様だった。

この作品のキーワード
恋愛  再会  草食  野獣  運命  過去  王子様  友情