涙交じりで絞り出したこの声が、美麗さんの本心なんだろう。
この人は、心の底に隠している本音を言うのに、こんなにも力が必要なんだって思ったら、私の目には涙が浮かんでいた。


「あはは、ごめんねー。破局したら戻ってくるから」


遠山さんはカラカラと笑う。重たくとらえることも軽くあしらうこともない。
ただ受け止め、自分が取れる最大限のことを言うだけ。弱いところを隠して、“出来る女性”でいようとする美麗さんにとって、きっと遠山さんは一番自然体でいられる相手だったんだろう。


「……嘘です。幸せになってください」


すぐに冷静に戻って、そんなセリフで涙を隠そうとする。

駄々をこねることができない美麗さんにとっては、あさぎくんへの『どうしてですか』と問いかけることも、勇気のいるものだったに違いない。

私はダメだ。感情を隠すのが下手すぎる。
既に涙がボロボロこぼれて、我慢できずに遠山さんの腕に抱き着いた。


「私もっ、寂しいです、遠山さん」


すると美麗さんは対抗するように遠山さんの反対側の腕に抱き着く。


「私のほうが寂しいわよ。あなたより長く一緒に仕事していたんだから」

「分かってますよ。だから一緒に泣きましょーよ」

「一緒にって……」

「寂しいのは事実です。幸せを願ってるのも。遠山さんなら困ったりしない。分かってくれます」


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